油圧ディスクブレーキ使用上の注意

2025年5月11日by 西村大助

ディスクブレーキ搭載自転車を初めて手にされた方へ。
ディスクブレーキはとてもパワフルで安全性が高い反面、取り扱いには注意が必要です。
納車したばかり、または受け取ったばかりの今だからこそ、ぜひこの記事を参考に、安全で快適なサイクルライフをスタートさせましょう!

1. まず最初に:取扱説明書を読みましょう 📖

スポーツバイクには、製造元(例:Shimano・SRAMなど)による取扱説明書が用意されています。

最近では紙の冊子が付属しないことも多く、メーカーの公式サイトなどからオンラインで確認できる形になっています。

取扱説明書には、変速機やドライブトレイン、ディスクブレーキなどの基本的な使い方や、パッドの交換目安など、安全に走行するための注意点がしっかりまとめられています。

まずは必ず目を通しましょう。
バイクを守り、自分自身も安全に楽しむために、何より大切なスタートラインです。

2. 回転中や使用直後のディスクローターに絶対に触れない

ディスクローターは走行中に高速回転し、さらにブレーキングによって非常に高温になります。
指先を切ってしまう怪我や、火傷のおそれがあるため、絶対に触れないようにしてください。長いダウンヒルの途中で停車してローターを指で試しに触ってみたことがありますがしっかりと火傷しました。

特に小さなお子様がいるご家庭では、停車中や保管中も手が届かないような場所に置くなど、注意が必要です。

3. ブレーキ周りを汚さない

チェーンにスプレーオイルをかける様子。ブレーキディスクにかからないよう注意している
チェーンにスプレーオイルを使う際は、ブレーキディスクに飛ばないようウエスなどでしっかりガードを。ブレーキトラブル防止のため、ドロップタイプの注油がおすすめです。

ブレーキ周辺に油分や汚れが付着すると、制動力が著しく低下し、事故の原因になります。

  • 洗車時のケミカルスプレー飛散
  • チェーンオイルの飛び散り
  • 手の皮脂汚れ
  • 雨天時に路面から跳ねる油膜

こうした汚れが付着しないよう、洗車や整備の際にはブレーキ部分を布などで覆うことをおすすめします。専用のカバーもあり。

万が一油分が付着した場合、制動力が完全に失われる可能性があるため、部品の交換が必要です。無理に拭き取ろうとせず、専門店にご相談ください。

4. 乗車前のセルフチェックリスト

摩耗の異なるディスクブレーキパッド3種類の比較
左から順に、ベースプレートまで削れてしまっているパッド、交換時期を少し前に迎えているパッド、まだ使用可能なパッド。パッド残量は定期的に確認し、早めの交換を心がけましょう。

走り出す前に、以下の点を必ず確認しましょう。

目で確認 👀

  • ホースや継ぎ目にオイル漏れがないか?
  • ホースが鋭角に折れたり、無理に曲がっていないか?
  • パッドの残量が0.5mm(シマノ)1.0mm(スラム)以上あるか?
  • ローターの摩耗や過度な削れがないか?
  • ブレーキ面に油汚れがないか?
  • パッドとローターの間に適切なクリアランス(隙間)があるか?

耳で確認 👂

  • 異常な音(連続的な擦れ、金属音など)がしていないか?

手で確認 ✋

  • レバーを握ったときに適切な引きしろがあるか?
  • ブレーキの効きがスムーズであるか?
  • レバーがふにゃふにゃしたり、スカスカした感触がないか?

5. エア噛み(空気混入)の症状と対処法

油圧ディスクブレーキは、システム内に空気の気泡が混入することで、ブレーキが効きにくくなる現象が起こることがあります。これをエア噛みと呼びます。

エア噛みが発生すると、レバーの握りが「フニャッ」としたり、「スカッ」と抜けたような感覚になります。最悪の場合、ブレーキがほぼ効かなくなることもあるため、注意が必要です。

エア噛みが起きやすいシチュエーション 🧳🚗

作業スタンド上で逆さに設置されたMTBの全体像
メンテナンス作業のために逆さに設置されたマウンテンバイク。油圧ディスクブレーキ搭載車では、逆さにするとエア噛みの原因になることがあるため、長時間の放置や輸送時には注意が必要です。
  • バイクを逆さにして運搬・保管したとき
  • 長期間乗らずに放置していたとき
  • 輪行や車載移動後

簡単な応急処置 🛠️

バイクを正立させてからレバーを何度も繰り返しニギニギして、気泡をリザーバー(予備タンク)に戻しましょう。ほとんどの場合、これだけで正常な状態に戻ります。

それでも直らない場合や、頻繁にエア噛みが起きる場合は、油圧システムのエア抜き(ブリーディング)が必要になるので、ショップにご相談ください。

6. 車輪を外すときに必ず守ること

ブレーキキャリパーにパッドスペーサーを差し込んでいる様子
ホイールを外して作業する際は、誤ってブレーキレバーを握ってしまわないよう、パッドスペーサーを差し込んでおくと安心です。

油圧ディスクブレーキは、パッドの減りに応じてピストンが自動調整される仕組みになっています。
このため、車輪を外した状態でレバーを握ると、ピストンが出過ぎてしまう現象が起こります。

ピストンが出すぎると、ホイールを元に戻すときに隙間が足りず、車輪が入らない、またはブレーキが擦りっぱなしになるなどのトラブルに発展します。

正しい対応 ✅

  • 車輪を外す前にパッドスペーサーを挟んでおく
  • 代用品として、厚めの紙(旅行パンフレットなど)でも可

輪行・長時間寝かせる場合のポイント 🚲📦

輪行や車載などでバイクを寝かせたり逆さにしたり、縦に立てる場合も、注意が必要です。

パッドスペーサーまたはローターがパッド間に入った状態で、レバーを握ったままの状態でストラップやベルクロバンドなどで固定しておくことで、エア噛みを予防できます。

もしやってしまったら 🔧

無理に戻さず、脱脂した薄手の工具(または専用セパレーター)でパッドを押し戻しましょう。
押し戻した後、車輪を取り付けたら、レバーを数回握ってピストン位置を安定させてください。

7. 音鳴り・異音について

ディスクブレーキは構造上、多少の音鳴りが発生する場合があります。音の種類によって、放置してよいものと、対処が必要なものがあります。

気にしなくてよい音:

  • 激しくこいだときに一時的に出る擦れ音(フレームたわみ由来)
  • 軽く回しているときに聞こえるごく軽い音(わずかなローター歪み由来)

対処が必要な音:

  • 常に擦っている音(車輪の固定ミスや調整ズレ)
  • ブレーキをかけたときに大きく鳴く音(油分付着の可能性あり)
  • 金属同士が擦れるような音(ローターとキャリパーの接触)

異常な音が続く場合や、ブレーキの効きにも違和感がある場合は、こちらの記事がおすすめですが、必ず専門店にご相談ください。
👉 ディスクブレーキの異音を解消!音鳴りの原因12選と対策ガイド

8. 安心して乗るために

ディスクブレーキは繊細なパーツです。気になる症状があれば、無理をせず、プロショップでの点検をおすすめします。

点検はいつでも無料で承っていますので、安心してお越しください!

以下のディスクブレーキ関連記事もぜひご確認ください。

👉 ディスクブレーキのパッド交換時期と摩耗点検ガイド
👉 ディスクブレーキの異音を解消!音鳴りの原因12選と対策ガイド
👉 ディスクブレーキのオイル交換タイミングはいつ?セルフチェックとお店での点検のすすめ

こちらのディスクブレーキメンテナンス関連商品もおすすめです。

👉 オーストリッチ ダミーローター(パッドスペーサー)
👉 ディスクブレーキクリーナー
👉 ディスクブレーキカバー
👉 グランジ ディスクローターセンターリングツール
👉 フィードバックスポーツ ロータートゥルーイングフォーク2.0


所沢店の中の様子をガラス越しに撮影した写真

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